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スピリチュアル・シリーズ

『魂の源境へ』─映像交響詩─
   

おおえまさのり著
ISBN4-915497-77-1 C0014 
A判並製 初版/2002年2月
2700円+税
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人は問いつづけている。
人とは何か、わたしとは誰か、なぜここにいるのかと。
主客を超えた魂の源境において、境界を超えて、互いに響き合えるものがある。
わたしを求めて、わたしを捜して……、魂の源境にいたり、そして己を咲かす。そこに世界の変容が立ち現れてくる。


【目次】


第一章 魂の源境へ
サイケデリック・レヴォリューション/一の王国/神秘の闇 ほか
第二章 心の故郷としての
八ヶ岳/遊戯/ひと夏の瞑想 ほか
第三章 世界の変容へ
いのちの世紀へと/祭りの後に/神話を紡ぐ人々 ほか


 
▼永遠の仏

 生の前に立ちはだかった死という闇、誰もが避け得ない、深く大きな闇。その闇の前で人は立ち止まり、恐怖し、神を、不死を求めて泣き叫んできた。

 だが人は死を通して生に目覚めるものである。死に照らし出されてはじめて生はその姿をわたしたちの前に見せてくれる。生が自覚の中に立ち現れてくるのである。

 死ぬことを学ベ!と『チベットの死者の書』はいう。

 死に引き裂かれつづけてきた生。『チベットの死者の書』は、何人も避け得ない死という不条理を背負った人に、死のそこにこそ、生の秘密を解く鍵があるという。生の最も奥深い秘密、「死を超えた生」を掴みとる鍵が。

 「生と死を理解する鍵は、最も奥深くにある心の本性に立ち返ることであり、それが死の瞬間に起こるのです。通常の心の妄想は消え、私たちの心は空のような無限の状態へと、覆いを外された状態になります。それは宇宙全体を包み込む広大なものです」(ソギャル・リンポチェ)

 死の瞬間は、生の最も輝かしい栄光のときであり、心の本性である、眩しく輝く原初の光に溶け入るそのときです。死は、今、全く新しいヴィジョンをもって、わたしたちの前に現れつつあります。死は消滅ではなく、生の超越であり、生を超越する永遠の生命の光に溶け入るその時なのだ、と。

 そして今日、『チベット死者の書』が読まれ、話題となるのは、時代が死を予感し、あなたがそれを要請しているからに他なりません。

 四十九日間に渡る『死者の書』の旅を通して、あなたはどんなわたしを発見したことでしょうか?どんなあなたが発見されたでしょうか?

 インドの有名な詩人ラビンドラナート・タゴールの晩年の詩に次のような歌があります。

「原初の日の太陽が

たずねた

存在の新しい開示に向かって−

お前は誰か?

返事はなかった。

一年は一年とすぎて

最後の日の太陽が

最後の聞いを投げる

西の海の渚で

沈黙した夕闇の中に−

お前は誰か?

返事はない」 

 わたしたちはわたしたちの心の中に「永遠の仏」を発見しないかぎり、生きてゆくことのできない存在なのだと思い知らされます。生の時空と死の時空がクロスする無常の直中に、人々は永遠を見ようとしたのです。かくして仏教の英知は、生と死がクロスする、その超越的な空の時空である「絶対の今ここ」に、一瞬一瞬、刻一刻の永遠を立ち現させたのです。

 絶対の今ここ(超越的な空の時空)に立つとき、無常がそのままで永遠と、生がそのままで仏となる錬金術がそこにあります。

 最古の仏典『スッタニパータ』 には次のようにいわれています。

「つねによく気をつけ、自己に固執する見解をうち破って、

世界を空なりと観ぜよ。

そうすれば死をわたることができるであろう。

このように世界を観ずる人を、死王は見ることがない」

 まさにそれは空の錬金術のなせる技です。

 この空の一点ゆえに、人は死をわたることができるのみならず、世界は真如(本然の在るがまま)から現し出されることもできるし、互いに溶け合うこともできます。今日の環境問題が指摘するように、世界は相互依存的であり、それ(個)だけで存在することはできません。そして相互依存的な世界が成り立つのは、世界が本質的に空(実体がない)だからです。

 空ゆえに、わたしたちが互いに他を含み合い、またわたしたちがそれぞれの個の内に全体(全宇宙)を宿し、かつ同時にそれぞれの一点一点、一人ひとりが世界の中心であることができるような、宮沢賢治が夢見たであろう奇跡的な世界観を持つことが可能となるのです。

 東洋のこの空観に裏付けられた死の思想は、血で血を洗うような民族紛争や南北間題等で混迷する今日の世界を解き開いてゆく重要な鍵ともなるように思われます。死の思想が育まれることによって、生の思想が育まれてゆくにちがいありません。

 
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