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アーユルヴェーダ叢書

『南インドの伝統医学―シッダ医学の世界―』
   

佐藤 任・著 
ISBN4-86103-043-9 C0077
四六並製 
定価2500円+税 2006年9月初版  
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□■本邦初のシッダ医学入門書□■
シッダ医学は、南インドの「シッダ」文化が生んだ伝統医学であり、鉱物薬の多用に見られるように、今なお古代の真髄が色濃く残されている。本書はシッダ 医学の格好の入門書であると同時に、北インドの「ヴェーダ」文化に比類する「シッダ」文化のガイドでもある(東邦大学名誉教授・幡井勉)。

  シッダ医学では不死の身体を作るために、消滅しない物質に関心があり、細胞の老化を防止する薬物を探究した。ここから滅びない物質としての金属、鉱物が探 究されたが、これは金属・鉱物学の分野での先駆となった。しかもそれは、少量で、不変化で、また季節を問わずに採取できるという利点があった。
特に水銀と硫黄が重視され、水銀(シッダ=ラサ)はシッダ医学の基本鉱物とされている。シッダ医学の達人をシッダルという。つまり医師であると同時に錬 金術師であり、またヨーガ行者(ヨーギン)でもある。インドの伝統医学としてのシッダ医学は、南インドのタミル圏で一般医療として実際に利用されている。 一九八九年のインド政府報告によれば、シッダ医学はアーユルヴェーダ、ユナニーに次いで三番目に普及している伝統医学となっている(本文より)。


【目次】

第・部 理論編 
第1章 シッダ医学入門 
第2章 シッダ医学の宇宙観  
第3章 シッダ医学の原理  
第・部 臨床編  
第1章 シッダ医薬概論   
第2章 偏頭痛   
第3章 風邪   
第4章 喘息  
第5章 白内障  
第6章 耳病   
第7章 婦人科疾患   
第8章 心疾患   
第9章 皮膚病  
第10章 腰痛   
第11章 リウマチ   
第12章 癌


 
 シッダ医学の特徴を大雑把に理解するために、ここでその幾つかの問題を見ておこう。

 シッダ医学には次の八項目の診断・検査の方法がある。すなわち1脈診、2眼診、3声診、4触診、5色(肌色)診、6舌診、7便診、8尿診。このうち脈診と尿検査はシッダ医学の際立った特徴である。

 (A)脈診。シッダは基本的にヨーギ(行者)であり、副次的に医師である。ヨーガ=シッディは深い瞑想を必要とする。脈診は精神の集中が必要であ る。脈の速度(割合)、量、張力(圧力)の測定は今日では一般的である。シッダは脈で診断と同時に予後もする。脈を取るのに適した部位として、@頚動脈、 A上腕動脈、B橈骨動脈、C胸部すなわち心臓部、D側頭部、E上腹部、F大腿動脈、G膝窩部、H頭骨の頂上(特に幼児の場合)が挙げられている。一般に男 は右手の橈骨、女は左手の橈骨で測るのが良いとされている。

 患者の脈数は年齢によって細別されている。

 生まれたばかりの赤ん坊 … 一四〇(一分につき)

 小児 … 一〇〇

 若齢の少年 … 一二〇〜一三〇

 青年 … 九〇

 成人 … 七〇〜七五

 成人女性 … 七五〜八〇

 老人 … 七五

 坐った姿勢(男女) … 四〇

 寝床に横たわっている場合 … 六七

脈を測ってはいけない種々の条件が指摘されている。脈拍に影響するいろいろな要因として、年齢、性別、時間、曜日(惑星)、季節が挙げられている。 適切な師匠と長年の経験がないと、脈診はできないと言われている。グル=ナーディは他の全ての脈搏を完全に支配していると言われている。グル=ナーディの 座は、パンチャ=ナーディ(五脈)の中心である。次表はパンチャ=ナーディと五元素と五指の対応表である。

       五指    五脈    五大  

       親指   ブータ脈   地

       人差指  ヴァータ脈  風

       中指   ピッタ脈   火

       薬指   サラパナ脈  水

       小指   ブータ脈   空

 脈の打ち方は三つある。ヴァータ、ピッタ、カパがそれぞれ四:二:一の割合のとき、健康とする。三つの脈のうちヴァータが基本となる。シッダで は、脈をコントロールする人は死をコントロールする、という。また、ラージャヨーガで精神的、心理的コントロールをする。一分間に十五回呼吸する健康な人 の寿命は百二十歳という。

 (B)尿検査 シッダ医学の尿検査の目的は、トゥリドーシャの優勢を見つけだすことと、予後を知ることにある。その方法はとても簡単で、装置も実 験室もいらない。検査項目は、色、臭い、濃度、量、泡、表面張力(油の広がり方)の六種がある。これでドーシャ、冒された器官、病気の原因を診る。

 ○尿の色。@不透明または乳白色=ヴァータ、A薄い黄色を帯びた赤=ピッタ、B濃い黄色を帯びた赤=黄疸、C泡の多い尿=カパ、D濃い赤(ルビー のような)=危険な徴候、Eミルクのような白色の場合は悪性の徴候、F蜂蜜色=この病気はやや時間がかかるが治癒する、G麦色または黄色の場合は病気は治 癒する。

 ○胡麻油の進行による尿の検査。陶器かグラス容器に尿を入れて、容器を明るい日光の下に置き、胡麻油を一滴落とす。油滴が長く伸びる場合はヴァー タ。あらゆる方向に広がるのはピッタ。花模様に見える場合はカパ。油滴が多数の滴に分離するか、油滴が分離しない場合は、その病気は徐々に治る。油が底に 沈むならば、その病気は治りにくい。油滴がゆっくり広がれば、その病気は早くに治る。

 油滴が、身体の手足や胴体、魚、囲繞の場所にある神殿、象、丘陵、傘、髪束、ヒンドゥー寺院で用いる団扇、蓮華の花、象牙、湯飲み、鏡、巻貝、弦楽器(ヴィーナ)、四角の家、蓮華の蕾に見えるならば、その患者は治癒する。

太鼓、壷、豚、陶工の轆轤に見えるならば、その病気はゆっくり治る。

 一本足・三本足・四本足の頼りない構造、頭のない胴体、ナイフ、槍、杵、弓、鉈鎌、蛇、猫、鼠、瓢箪、虎、鳥、猿、獅子、馬、コブラ、蔓草、牛、飛鳥、亀、蠍のように見える場合、もしくは油の範囲が収縮し・泡立ち・消滅すならば、その病気は不治であるか致命的である。

 (C)薬物の使用する時刻。 シッダの医師は占星術(天文学)の知識が必要である。星宿(九曜)と薬物との一致、惑星(曜日)薬との関係(例えば、月曜、水曜は無効、火曜・木曜・日曜は良効)、日時との関係、日々の月の干満との関係が指摘されている。

 (D)薬物と薬物との相関関係。 シッダでは薬物を敵(シャトル)と友(ミトラ)に分けて認識している。

 敵(シャトル)はその性質が他の薬物と非親和性、非融和性であることを意味している。友(ミトラ)は、その薬物を他のものと混合した場合に、薬効 が共労作用によって増大することを意味している。つまりある薬種が別の薬種と親和性、融和性のあることを示している。またこの親和性と非親和性の分類法の 概念が、近代医学の概念の先駆であったことが指摘されている(本文より)。

 
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