はじめに
蓮と人とが関わりも持つようになったのは、文献上では五千〜六千年前です。
その頃すでに、インドや中国では豊穣、多産、吉祥を寓意する花として、たいへん親しまれていました。それは蓮の各部(花、蕾、実、葉、茎、蓮根など)に名前が付いていることから、有用植物として大事にされ長い間栽培されてきた証ではないでしょうか。
食用として、生薬として、また工芸品などに、その用途は多岐にわたっています。そしてさまざまな伝説も生まれてきています。今日では国花にしている国もあるほどです 。
蓮の花は花卉園芸品種では最も古い歴史を持つ花の一つです。蓮が地球上に出現したのは、出土した化石から、約一億年前の白亜紀後期頃と推定されています。それから何度かの氷河期をくぐり抜けて生き延びてきた植物です。
わが国でも、蓮の花が太古より自生してきたことは、化石の出土により明らかです。また、古墳時代の遺跡から蓮文様の遺品も発見されています。万葉時代の蓮は観賞花として和歌に詠まれています。しかし、仏教が伝来すると、次第に観賞花から仏教を象徴する浄土信仰の花として、寺院を荘厳する花になりました。
そして再び観賞花に復活するのは江戸時代中期になってからです。このように蓮の花は長く親しまれてきた歴史を持つ花ですが、その植物学的形態のほとんどは解明されていません。
蓮の花の普及に、ほそぼそと個人的に努力した研究者に、古くは白河藩主・松平定信、近年では大賀一郎、阪本祐二、古畑光男、内田又夫などがいました。しかし、総合的に研究されていません。
今日、IT技術が発達し、インターネットの普及には目覚ましいものがあります。誰もがネット上に書き込みができるために、情報が氾濫し、明らかに間違っていることも目立ちます。これは蓮の花に関しても例外ではありません。わが国には公共機関はもとより、大学にも、蓮を総合的に研究する機関がありません。
そんな訳で、蓮の花にかんする発表や研究の結果を照合することには、大きな困難があります。
蓮文化研究会では、主に花を愛でる花卉園芸品種としての「花蓮(はなはす)」の疑問について、会員がそれぞれ得意とする分野の蓮の花を取り上げて解説し、蓮文化研究会の会紙『蓮通信』 に掲載し配布しています。
それを多くの人達に知っていただきたく、ウェブサイト上でも公開しています。
ここに掲載した100は、会紙『蓮通信』34号(二〇〇七年)から43号(二〇〇九年)に「蓮Q&100」として掲載したものです。執筆字数に制限があり、十分説明できなかったものもあります。
本書が蓮の花の見直しの一助になれば幸いです。
いろんな視点から蓮の花を取り上げましたが、まだまだ枚挙にいとまがないほどの、蓮の不思議がありますが、いずれかの機会に譲ります。
二〇〇九年五月
蓮文化研究会・理事
三 浦 功 大
目 次
001 世界の蓮の原産地
002 行田の古代蓮
003 原始の蓮の色
004 観賞の蓮・花蓮の品種
005 蓮と睡蓮
006 世界の野生の蓮
007 花を咲かせる蓮・花蓮
008 蓮根から開花させる方法
009 蓮の実から開花させる方法
010 浮き葉と立ち葉
011 蓮の葉にできる水玉
012 蓮の花の香りの正体
013 蓮の花は開くとき音がする?
014 蓮の花は4日の命
015 最初に観蓮をした西施
016 蓮の花で街を飾った最初
017 蓮の園芸のはじまり
018 敦煌の壁画にある観蓮の絵
019 蓮の花の誕生日
020 移ろう蓮の花の色
022 蓮茶、蓮芯茶
023 蓮藕排骨湯
024 広東的、蓮藕調理法
025 台湾のご馳走「蓮子美食大餐」
026 蓮の実飛ぶ
027 長寿を保つ蓮の実
028 江戸時代以降、盛んに生産されたレンコン
029 安くて栄養価の高いレンコン
030 蓮の活花
031 蓮花の色を決める色素
032 花弁にできる斑模様
033 触覚を楽しませる蓮グッズ
034 視覚を楽しませる・蓮人形
035 蓮根の粉で作る麺類
036 東大寺の大仏殿にもある蓮の造花
037 高尚で、優雅なおもてなし「象鼻杯」
038 葉の茎や花の茎から取る藕絲
039 藕絲、蓮絲からできる製品
040 当麻寺にある「当麻曼荼羅図」
041 蓮実で作る数珠
042 嗅覚の芸術・香道
043 蓮の香りの線香
044 ロータスフラワー・アブソリュートの製品
045 音楽にある蓮の花
046 交響曲にある蓮の花
047 日本の蓮の花の楽曲
048 蓮の花の人形
049 蓮文様の提灯
050 蓮の実で作った甘納豆
051 『かえるのピータン』
052 『そうべえ ごくらくへゆく』
053 『わにくん』
054 『かえるのあまがさ』
055 『はすいけのぽん』
056 『うしおくんとはすひめちゃん』
057 『10+ 1 ぴきのかえる』
058 韓国の蓮の絵本
059 『レンコン(ハス)の絵本』
060 『くもの糸』
061 日本の蓮の切手
062 中国の蓮の切手
063 台湾の蓮の切手
064 マカオの蓮の切手
065 韓国の蓮の切手
066 ベトナムの蓮の切手
067 インドの蓮の切手
068 ロシアの蓮の切手
069 モンゴルの蓮の切手
070 アメリカの蓮の切手
071 最古の蓮の陶器
072 最古の蓮の玉器
073 最古の蓮の青銅器
074 最古の金属の蓮
075 最古の銀製の蓮
076 最古の蓮の画像磚
077 最古の蓮の漆器
078 最古の蓮の扇絵
079 日本最古の金属の蓮
080 正倉院にみる蓮の御物
081 「天寿国曼荼羅」のなかの蓮
082 「お練」のなかの蓮
083 隠岐島にある蓮華舞
084 蓮を詠んだ中国最古の詩集
085 蓮を詠んだ日本最古の詩集
086 インドの神話にみる蓮
087 中国の蓮の文人
088 日本の蓮の文人
089 インドの古詩にみる蓮
90 蓮を記録した最古の日記
091 『源氏物語』のなかの蓮と荷葉
092 『風土記』にみる蓮
093 『本草綱目』にみる蓮
094 古代中国の蓮の専門書
095 現代中国の蓮の専門書
096 古代日本の蓮の専門書
097 現代日本の蓮の専門書
098 アメリカの蓮の専門書
099 インドの蓮の専門書
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